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本当なら試験最終日の今日、圭一を誘ってどこか遊びに行こうと思ってた。
試験が終わった今、あとは夏休みに入ってしまう為、これから1ヵ月半の間、大学で圭一に会える事もなくなるのだ。 もちろん、休みに入ったからといって、大学には行かないからと言って、圭一に会えないわけじゃない。会いたくなれば連絡をとって会えばいいだけの話だ。 だからこそ、休み中の約束を取り付けたかったからこそ、今日は圭一を誘ってみようと思っていたのに。そんな晴彦の楽しみは、何故か険しい顔で促してくるチュウによって阻まれた。 帰り道、それぞれに大学からほど近い場所で1人暮らしをしている晴彦達は、この後どうするかという、遊びの相談で盛り上がっていた。もちろん晴彦だって、笑顔でその輪の中に入っていたのだが、大学を出る前に声を掛けてきた通り、すぐにでも晴彦の部屋へと向かおうとしていたチュウによって、半ば無理やりその輪の中から連れ出されたのだ。 『悪ぃ、俺らちょっと用事あるから』 『へ?チュウ?』 俺は別に何もねえよ?と、そう訴えかけるその前に、『いいから来い!』と引きずられ。 呆気にとられたようにして自分達を見ていた圭一達に、まともに『バイバイ』も言えないまま今に至る。 「なんなんだよ〜。みんなびっくりしてたじゃんよ」 大学から歩いて10分ほどの晴彦のアパートに戻り、六畳一間の部屋の中、引きっぱなしの万年床を足で払うようにしてその場所に座ったチュウへと、そんな当然の不満をぶつける。 と、一瞬呆れたような視線で、まだ立ちっぱなしだった晴彦を見上げてきたチュウが、大げさとも取れるほどに大きなため息を零した。 「おまえ、ちょっとイキすぎじゃね?」 そして、呟かれた言葉。その言葉の意味を理解できない晴彦が、僅かに眉を顰めながらチュウの隣にドッカリと腰を下ろした。 「は?言ってる意味がわかんねえんだけど。なんかおまえ、ちょっと感じ悪ぃぞ」 「わかんねえって、マジで自覚なしかよ」 「だから、わかるように言えってんだ。俺が何したってんだよ」 「ケイちゃん」 「ケイ…ちゃん?え?ケイちゃんが何?」 「マジで惚れたとか、そんな笑えない冗談言うなよ?」 来ていたシャツの胸ポケットから取り出した煙草に火をつけながら、いつもの軽い口調で言い放ったチュウの表情は、それでもどこか真剣さを含んでいて。 一瞬ポカンとしてその横顔を凝視した晴彦だったが、笑ってかわせない雰囲気をそこに感じ取り。 「…………は?おまえ、何言って…んの?」 またいつもの冗談かと、そう思うのに。ようやくにして口から出たのは、少し掠れ、はっきりとした動揺を表した声だった。 「はは……冗談キツ……俺もケイちゃんも男だぜ?」 「そうだよ。冗談キツイよな」 そして、そんなわかり切った事を言葉にする晴彦に、それまでほんの少しだけ険しく歪められていたチュウの表情が僅かに緩み。 吸い込んだ紫煙をゆっくりと吐き出しながら、再び晴彦へと向けられた瞳の中に、安堵の色が広がっていた。 「わかってんならいいんだよ。ただな、度が過ぎると、冗談が冗談じゃなくなるって事もあんだよ。元々ケイちゃんに対しては、最初から構いすぎてんなあとは思ってたけど、最近特に目に付くからさ。それこそ、変に勘違いされちまうんじゃねえかってくらい」 「勘違いって……相手が女の子ならまだしも、男同士で何を勘違いするってんだよ」 「おまえのケイちゃんへの接し方が、まんま女に対する時みてえだって言ってんの!間違えんなよ?可愛い顔してたって、ケイちゃんは女じゃねえんだぞ」 ニッと、意地の悪い笑みを浮かべながらそんな事を釘さしてくるチュウの口調は、もうすっかりいつもの軽口を叩く調子のものだったが、それに曖昧な笑みで返した晴彦の心中は、このとき実は穏やかとは程遠い場所にあった。 「だいたいなあ、ケイちゃんの性格からして、今の状況は戸惑いの方が大きいだろうから、おまえが助けに入る事だって感謝してくれてっかもしんねえけどさ。この状況に慣れてきたとき、ケイちゃんが冷静におまえの態度を見たら、ちょっとウザくてキモイって思われるかもしんねえぞ」 「俺……そんなに…?」 「相手が女だったら、間違いなく勘違いまっしぐらだな」 ケラケラと、しまいには笑い出してしまったチュウを目の前にして、晴彦は自分の中でずっともやがかっていた気持ちが晴れていくような感覚を感じていた。 「おまえって単純だからさ、度が過ぎて、いつかマジで恋愛なんて事になったら、さすがに笑えねえし。心優しいお友達からの忠告だよ」 「チュウ……」 「んぁ?いいって、いいって。真面目に感謝なんかされたら、照れくせえじゃねえか」 呆然とした様子の晴彦の態度をどう勘違いしたのか、バシバシと肩を叩いてきながら笑うチュウは、すっかり話を冗談の一環としてすり替えてしまっていて。 「まあ、ケイちゃんの事構いたいのはわかるけどよ。俺から見たって、ケイちゃんって反応がいちいち可愛いしさ。でも気をつけろよ〜おまえって本当に単細胞だから、いつか自分の気持ち勘違いしそうでさ、怖い怖い」 「そうじゃなくて!チュウ……俺……」 大学に入学して知り合ってからずっと、一番気の合う友人として常に晴彦の近くにいたチュウにしてみれば、少し行き過ぎだと感じてしまうくらい圭一に構う親友が、その単純さが故に道を踏み外してしまうのではないかと、ほんの少しよぎった心配事を解決しようとして発した言葉だった。 もちろん、その発した言葉の大半が冗談で。これまで一緒になって合コンに勤しんでいた友人が、まさか本気で男に惚れているだなどと、真剣に心配したわけではなかった。 それでも、一番近くにいたからこそ、自分達に対するものとは明らかに違う、晴彦の圭一に対する態度から、僅かとは言え予感めいた思いがあったのかもしれない。だからこそ、本来なら言わずにやり過ごすであろう言葉を、あえて晴彦にぶつけたのかもしれないと、今この瞬間、目の前の親友の困惑した表情を見た時、確信とともに強い後悔を感じてしまっていた。 「な…んだよ…え?ハル?」 「俺、今やっとわかった……」 「お…おい…」 「サンキュー!俺、ケイちゃんの事好きだわ」 「……はっ!?」 晴彦の単純さ故に、このままだったらいつか本気で圭一の事を好きなのだと、そう勘違いする日がくるんじゃないかと、そんな心配は少なからずしていた。 でもだからこそ、そんな単純な晴彦だからこそ、こうして先手を打って釘を刺しておけば、男同士の恋愛なんてありえない、笑えない冗談だとそう言えば、構いすぎている自分を戒めてくれるんじゃないかと、そんな期待だってしていた。 それがまさか、こんな展開になろうとは──…。 「ずっとさ、こう……何かすっげえもやもやしてたんだ。チュウが言ったとおりだよ。俺は確かにケイちゃんに構いすぎてる。それは自分でもわかってたんだ。でも、もちろんケイちゃんは女じゃねえし、俺は女の子好きだし。ケイちゃんに対する気持ちが、恋愛のそれだなんて考えた事もねえけど」 「お、おい!ハル!?」 「おまえが言ってくれたから、や〜っとスッキリできた!マジでサンキューな!」 「ちょ……待て!おまえ、俺の話し聞いてた!?」 「聞いてた聞いてた。勘違いなんかじゃねえよ。俺、マジでケイちゃんが好きなんだ。だから面白くなかったんだ……」 慌てるチュウを横目に、妙に晴れ晴れとした表情を浮かべる晴彦は、もはや親友の忠告を聞く耳など持ってはいなかった。 たった今、男同士の恋愛なんて有り得ねえし笑えねえと、そう言ったチュウの言葉など、見事に忘れ去ってしまっていた。 「冗談じゃねえぞ!!」 <<to be continued…→next click>> 目次はTOPページ(←クリックでページジャンプ)にございますm(__)m TRACKBACK
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チュウ、ありがとう!!
ヽ(≧▽≦)/
それにしても、この普通でない恋を自覚した時に
「や〜っとスッキリできた!マジでサンキューな!」
って言える明るさと言うかノーテンキさは凄い、凄すぎる!
晴彦は大物ですな!!
o(*^ー ^*)oにこっ♪
臆病なケイちゃんとこれからどうやって愛を確かめ合っていくのか、
楽しみにしていますね!