駄文倉庫

完全オリジナルにて、BL小説なる駄文を書き綴っております。 性的描写を含む表現も出てまいりますので、18歳未満の方のご閲覧はご遠慮くださいませ。

eternal lover act.11

カテゴリー : eternal lover
<自覚編>

最近、なんだか少し面白くない。
夏休みを目前に控え、前期の定期試験をも間近に控えたその日、憮然とした表情で晴彦は1人中庭の芝生の上に寝転んでいた。

「ちくしょう……なんだよみんな、手の平返しやがって……」

本当に、最近は面白くない事ばかりだ。
何が面白くないって、それはこの2ヶ月の間で少しずつ変わりだした、周りの反応。
それは、圭一がそれまでかけていた、お世辞にも見栄えがいいとは言えない大きな黒縁の眼鏡を外し、コンタクトレンズに変えた時から始まった。
チュウ達だけではない、それまでは圭一の存在を気に留めていなかった学生達が、手の平を返したかのように圭一に構いだしたのだ。
眼鏡を外した圭一は、その透けるように白い肌も、いつも潤みがちなぱっちりとした大きな瞳も、その瞳にまるで飾りのようについている長い睫毛も、ぷるんと少し厚めの赤い唇も、とにかく顔のどのパーツをとって見ても、思わず誰もが見惚れずにはいられないほどの可愛らしい美人だった。いや、男に可愛いだとか美人という形容をして例えるのもどうかとは思うのだが。

「最初に気付いたのは、俺だっての」

そして、そんな容姿のせいだけではない。圭一の持つ穏やかな雰囲気と、いつだってはにかむように、でもふんわりと浮かべられる笑顔に引き寄せられるように、その周りには人が集まる。
気付けば、いつの間にやら周りを人に囲まれてしまっていた圭一本人は、戸惑いの表情を浮かべながらいつも僅かに頬を染めていて、いつも少し困ったような笑顔を浮かべる。
それがまた可愛いだなんて言われてしまい、戸惑いを隠せないその瞳が、まるで助けてくれと言わんばかりに晴彦へと向けられる。
困ったように揺らす、いつもほんの少しだけ潤んで見える瞳に、そんな風にして見つめられると、いつだって晴彦の心臓はドキッと僅かに跳ね上がり、どんなに人に囲まれていたって、だからこそ自分を頼って向けてくれる圭一のそんな視線が嬉しかった。

『ケイちゃん、行こう』

いつだってそうやって晴彦が声をかければ、ホッとした表情を浮かべる圭一が、これまた思わずため息を零してしまうくらいに、ふんわりとした儚げな笑顔で頷くから。
ついついため息を零して、男も女も関係なくその笑顔に見惚れる学生達を退けながら、その場から圭一を連れ出す晴彦は、本人いわくナイトさながら。
そんな状況に、ちょっとしただなんてものではない、かなりの優越感を抱きはするものの、同時に面白くないという感情も湧いてきて。そんな思いがつい口をついて出れば、『最初に気付いたのは、俺だっての』だなどという愚痴へと繋がるわけだ。
『可愛くて優しくて、ふわふわと笑うケイちゃんに一番最初に気付いたのは俺!』それが、晴彦にとっての優越感であり、同時に後悔へと繋がる。

「なんで、コンタクトにしてみねえ?なんて言っちゃったんだろ。バカじゃねえの、俺……」

あの時、本当にそう思ったから口にした言葉。だけど、それがまさかこんな事になろうとは、想像もしていなかったのだ。
こんな事なら、コンタクトにしてみろだなどと言うのではなかったと、今になってそれを後悔したところで後の祭り。これまで気付かれることのなかった圭一の魅力を、大勢の前に晒してしまったのは、他の誰でもない自分自身なのだから、誰に文句を言うこともできやしない。
だから、何故かひどく悶々とする気持ちを抱えたままで、晴彦は1人こんな場所で拗ねてみる。

「西宮くん」
「ぉお〜ぅわ…っ!?」

圭一と初めて会話を交わした日、枕の役割を果たしてくれていた鞄をまたも枕代わりに頭の下に敷き、見上げた空のどんよりとしたグレーに、ますます気が落ち込みそうだと心の中で1人愚痴った時、いきなり頭上から覗き込むようにして現れた影の存在。
それが、今の今までふて腐れながら考えていた圭一だという事を理解した瞬間、晴彦の唇から自分でも意味の掴めない間抜けな声が発された。

「あ……起こしちゃったかな?ごめんね…」

ギョッと目を見開きはしたものの、起き上がろうとしない晴彦に、圭一が申し訳なさそうな表情で謝罪の言葉を口にする。

「寝てない寝てない!大丈夫っ!……です…」

慌てて起き上がり、そこまでする必要もないだろうと自分に突っ込みながらも、全力で否定する晴彦の姿に、驚いたように目を見開いた圭一が、やっぱりはにかんだようにふんわりと笑った。
自分1人がやけに焦ってしまっているという事実がどうにも照れくさくて、わざとらしい咳払いをしながらポンポンと自分の隣を叩けば、少し驚いたような笑顔で頷いた圭一が、素直にその場へと腰を下ろしてくれる。
たったそれだけの事がやけに嬉しくて、たった今まで感じていたはずの不機嫌が綺麗に流されていく。

「終わった?」
「うん」
「お疲れさん。なんだよな〜あいつら、ノートくらい自分でなんとかしろっての」

聞き逃してしまいそうなほどの、小さな小さなため息をついた圭一に気付き、覗き込むようにしてそう問いかければ、やっぱり困ったような笑顔で頷く圭一がなんだか気の毒で。
ブツブツと文句を言う晴彦の前に、少し遠慮がちに差し出されるコピー用紙の束。

「はい、これ…西宮くんの分」
「え?俺!?」
「うん。前に、ノートまともにとってないからやべ〜って、叫んでたでしょ?」

くすくすと笑いながら、手にしたノートのコピーを差し出してくれる圭一。
たった今、他の学生がこぞって圭一のノートを頼りにしている事に対して文句を言っただけに、それを受け取ってしまうのがひどく躊躇われて。

「いや…俺は……」
「そんな事言わないで使ってよ。せっかくコピーしてきたんだし」
「……すみません…ありがとうございます」

受け取るのを躊躇う晴彦の手中に、少し強引に押し込まれた紙の束を、面目ないと少し項垂れながら結局は受け取った。
これでは、結局圭一に群がる輩と同じではないかと、ほんの少しだけそう自分を責めながら。

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