駄文倉庫

完全オリジナルにて、BL小説なる駄文を書き綴っております。 性的描写を含む表現も出てまいりますので、18歳未満の方のご閲覧はご遠慮くださいませ。

inside monopoly act.3

カテゴリー : inside monopoly
(R-18)

どこか懐かしさを感じてしまう、カンカンと昇るたびに足音が響く階段を昇り、チカチカと、今にも切れてしまいそうな蛍光灯の灯りに照らされた、アパート2階の廊下に辿り着く。
まだ学生の頃から、親に学費以外の負担をかけたくないと、バイト代で家賃を払いあいつが暮らしてきたボロアパート。就職してまともに稼ぎだって得ているわけだし、いい加減引っ越したらどうだと言った俺に、「なんか愛着湧いちゃって。一応風呂もトイレもあるし、そんな居心地悪くねえもん」とあいつは言った。
引っ越せと言った俺の言葉の裏には、「一緒に住まないか?」という意味をも込めていたのだが、何故かこうして気持ちが通い合った今でも、あいつは頑なにそれを拒み続ける。
こんな薄い壁1枚で隔てられただけの環境では、セックスの時の声だって丸聞こえだぞと、半分の皮肉を込めて言えば、狼狽えたように顔を真っ赤にしたあいつが、それから最中の声を押し殺すようになりやがった。
余計なことを言ったかと、後になって後悔したが、本当のところの不満はそんな事じゃない。
どうして、あいつがそこまで俺と暮らす事を拒むのか。なんとなくわかるその理由だって、俺にしてみれば冗談じゃねえとしか思えないものだった。

階段を昇って、5つ並んだ扉のうち、左手奥から2番目の扉の前に立つ。そして、ほんの3ヶ月前、あいつの全てを手に入れた時に、半ば強引に手に入れた合鍵を取り出した。
これだってそうだ。俺が望んだから、あいつは差し出しただけ。こんなちっぽけな鍵ひとつでさえも、あいつからは「持っていてくれ」と切り出しはしない。
こんな事に拘るなんて、自分でも時々自分が情けなくなるが。それでも、あいつから向けられる視線だけじゃ足りない。いくらあいつが俺へと向ける想いが手に取るようにわかると言っても、それだけじゃ足りない。
形に拘るつもりはないと言いながらも、結局俺が拘っているのはそこなのかもしれないと思う。どんな小さな事であれ、あいつの全てをこの手にしていないと気がすまないんだ。
そんな欲求は、時々どうしようもないくらいに、あいつを壊してしまいたくなるくらいに膨れ上がってくる。

駄目だな──…あいつを手に入れてからというもの、俺は日増しに欲張りになっている。
まだまだ足りないのだと、向けられる愛情を目の前にしながらも、それと比例して乾いていく心を止められない。
こんな事では、いつか本当にあいつを壊してしまうかもしれない。それをわかっていながらも、抑えの効かない感情を持て余している。
あいつの顔を見る前に気持ちを切り替えなければ……と、細く息を吐き出した時、手にしたままの鍵を鍵穴に突っ込んでもいないのに、目の前の扉のドアノブが内側からゆっくりと回され。

「やっぱり…足音はしたのに、全然入ってこないから。お疲れ、どうかしたのか?」
「いや……」

ゆっくりと開かれた扉の向こうから、疑問を浮かべたあいつの顔が覗き。大きく開け放たれたそこに身体を滑り込ませながら曖昧な返事を返した俺に、それでもこいつがそれ以上を問いかけてくる事はなかった。

「飯は?食ったんだろ?」
「ああ…」
「やっぱり疲れてる?ごめん…わがまま言って」

部屋に入るなり、真っ直ぐに向かったリビングの床の上にドカッと座り込み、取り出した煙草を咥えた俺に、伺うようにして向けられる声。
やはり遠慮がちなその言葉に、治まりかけていたはずのイライラが舞い戻ってくる。

「別に。嫌なら来ねえし」
「うん…あ、何か飲むか?コーヒー…ビールの方がいいか」

不機嫌を隠そうとせずに言い放つ俺に、まるで腫れ物に触れるかのようにして掛けてくる声が気に障る。

「いらね〜」

火をつけた煙草の紫煙を深く吸い込み、そして天井に向かって吐き出した俺に、近づいてこようとしないあいつが所在なさげに立ち竦んでいて。視界の端に映った手首を掴み、そのままグイッと引き寄せた。

「あら…っ!?…っふ…んん…っ」

不意をつかれた形で、ドサッと腕の中に倒れ込んできたこいつが上げた、小さな抗議の声を塞ぐようにして少し乱暴に口付ければ、すぐに大人しくなった身体が、それでも緊張を解く事はなくて。
俺に体重をかけないようにと踏ん張るその仕草が、そんな小さな気遣いひとつが、意味なく俺の心を乱す。

「やらせろよ。たまってんだ」

そして寄せた唇で、耳元に息を吹きかけるようにして紡ぎ出した言葉。それに一瞬ビクリと身体を硬直させたこいつが、それでも拒絶する事などなくて。
一瞬感じた逡巡の後、それでもおずおずと首に回された腕が、微かな力を込めて俺を引き寄せた。

「新が疲れてないなら……俺はいいよ──…」

まるで自らを生贄として俺に差し出すかのような、俺の発する言葉のひとつひとつにビクついているように見えるこいつが腹立たしくて。
俺が言うからじゃない。どうして、自分から俺を求めようとはしない!?俺の存在は、一体おまえにとって何なんだ!?そう声を荒げて問いただしたくなる。

「…っつ……ぅ…っんん…」

乱暴な口付けでその唇を塞ぎ、開かれた口腔を余すところなく蹂躙し、噛み付くように仕掛けた愛撫にだって声を押し殺そうとする。
必死に耐えようとする仕草が、何かを飲み込もうとするかのようにきつく噛み締められた唇が、その全てで俺を拒んでいるかのような錯覚に陥り。

「声…聞かせろよ」

こいつが好きだと言った、甘く掠れた声で真っ赤に染まった耳へと囁きかければ、まるで駄々を捏ねる子供のように何度も首を横に振る。
それでも、離すまいと伸ばした手で縋りつくようにして抱きついてくるこいつからは、痛いほどに想いが流れ込んでくるのに。どうしてこんなに遠く感じるのだろう。
何度キスを交わしても足りない。抱きしめても、できた腕の隙間から少しずつ何かが零れ落ちてしまうような、そんな錯覚に捉われ、乾いていく心が全然足りないと訴えかけてくる。

「強情だな……」
「ひ…っ!いぁ…ああぁ…っ!」

どうしても声を上げようとしないこいつを乱れさせたくて、もっと啼かせたくて。まだ慣らしきっていない後孔へと、半ば無理やり欲望を打ちつけた。
穿った熱の存在に、弓なりに反らされ硬直した四肢が跳ね上がり、俺の腕を掴み締める手に痛いくらいの力が込められた。

「バ…ッカ……早すぎ…っる…!ぅあ…っ…あら…っ…動く……なぁ、あ、ああ…」

強引に推し進める行為に抵抗を見せながら、苦痛に歪んだあいつの表情が、俺の中の支配欲を駆り立て。その瞬間立てられた爪の存在が、ギリッと込められた力から与えられる痛みの分だけ、こいつを手に入れられたような気になる。

「っつ──…」
「ご…ごめ……っふ…んんんっ!」

無意識の内に俺を押し返そうとするこいつの手が、触れられた微かな引っかき傷を残す肩に、ピリッとした痛みをもたらし、僅かに顔を顰めた俺に気付いたこいつが、慌てたようにその手を離した。
それでも止めない打ち付けに、行き場を失った手で自らの口を押さえ声を殺す姿が、やけに艶めかしくて。理性を飛ばして乱れる姿も、俺が与える刺激を堪えようとする姿も、こいつの全てが俺の視界から脳髄までを犯していく。

それでも足りない──…足りないんだよ──…。

何度抱いても足りない。今確かにこの腕の中にあるはずの温もりも、それだけじゃ全然足りない。
心も身体も何もかも手に入れたはずなのに、それでもなおこいつの全てを貪りつくそうとする欲求が、後から後から湧き上がり。その内側までも全てを、この手に入れないと気がすまないんだ。

こいつに出会ってからの俺は、留まる場所を見失った狂いそうな独占欲に、思考も心も支配され、それこそこいつとドロドロに溶け合ってしまいたいと、そう渇望するくらいまでに膨れ上がった感情を持て余している。

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