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気持ち悪いって?俺がそう言ったって?
「そんな事……だって…っ!」 確かに、俺達の身体の関係の始まりは、そこに恋愛感情を伴うようなものではなかったけど。それでも、気持ちが悪いだなんて感情があれば、どんなに頑張ったって成立するようなものじゃないだろう? 俺も新も、別に男が好きなわけじゃなくて、関係を持ってしまうまでは、普通に女と付き合ったりしてた。俺も新も、女を抱いていた。 例えどんなに仲のいい友人だったとしても、男同士である俺達が肌を重ね合わせる事なんて、普通ならあり得ない状況だし、そこに気持ちが悪いという感情が少しでもあったのなら、続けられるはずなんてない。 少しでもそんな雰囲気を感じ取れば、気まずくなったっておかしくないのに、俺達はそれまでの関係を壊す事がないままに、関係を続けてきた。 それも、俺が自分の気持ちを自覚してしまった、あの夏から変わってしまってはいたが。 「覚えてねえのな」 不意に耳に届いた、静かな…寂しそうな声。 それにハッとして顔を上げれば、なんとも複雑な笑みを浮かべた新が、そのまま抱きしめていた腕の戒めを解き。 離れてしまった温もりが寂しくて。そのまま心までもが完全に離れてしまいそうな錯覚に陥り、怖くて──…。 追い縋ろうと伸ばした手は、無言のままで靴を脱ぎ部屋へと上がりこんだその背中に、届く事はなく空を切る。 「新…?」 待ってくれと、そう言いかけた俺を振り返った新が、やっぱり無言のままだったけど、静かに伸ばしてくれた手で、空を切って落ちかけた俺の手を握ってくれたから。 それだけで胸に広がった安堵感と共に、俺も靴を脱ぎようやく部屋の中へと足を踏み入れた。 そして、何も言わないままに俺の手を引いた新が、そのまま足を踏み入れたリビングのソファへと腰を下ろし、握ったままの俺の手を引き寄せた。 そこには、たいした力など込められていなかったけど、それでも引き寄せられるままにその腕の中にすっぽりと納まった俺の身体は、その瞬間完全に抱き込まれ。 「あの日……俺は酔ってなんかいなかった」 「え…?」 「初めてここでおまえを抱いた日……俺は酔ってなんかいなかったんだ」 初めて抱いた日──…その言葉に反応した俺の身体が、ビクッと震えを見せる。 と、その震えをどうとったのか、抱きしめてくる腕に痛い程の力が込められ。 圧迫される苦しさに、細く息を吐き出せば、緩められる事のない腕に、また僅かな力が込められた。 「別に、おまえに誘われたわけでもない。ただ……あの時、完全に酔っ払ったおまえを送ってきて…ソファに倒れこんだおまえが……なんでだろうな。すごく色っぽかったんだ」 「色…っ!?」 まさか、そんな言葉を言われるとは思わずに、思わずぶはっと吹き出した俺にも、新が恨みがましい視線のひとつも寄越してくる事はなく。ただ抱きしめられる腕の強さに、ドキドキと鳴り止まない心臓の鼓動が、徐々に息苦しさを訴えてくる。 「気づいた時にはキスしてた…」 「あ…らた…?」 「おかしいよな。俺は女が好きなはずなのに、おまえは男で…しかも、ずっとつるんでたダチなのに……それこそ今更だ」 不意に腕の中の俺を見下ろしてきた新の瞳が、一瞬細められ。その仕草にドキッとして…キス、されるかと思った。 そんな、俺の中に生まれた一瞬の期待が見抜かれたのか、そのまま逸らされてしまった視線に、バカだと思いながらもしっかり傷ついてる。 「自分から仕掛けといて、でも内心めちゃんこ焦って。すぐに離れようとしたけど…おまえが拒まなかったから……」 自分に言い訳をするような口調で言い募る新の表情が、一瞬苦し気に歪み。 「気づいたら、またおまえにキスしてて……やっぱり拒まれはしなかったけどな」 そして浮かべられた自嘲の笑み。 何故か、その表情が痛くて。何かを堪えるかのように、ひとつづつゆっくりと紡ぎだされる言葉が痛くて。 あの日──…3年前のあの日は、大学の卒業を間近に控えた、まだ肌寒い夜だった。 俺達は、所属するゼミの追い出しコンパに顔を出していて。普段、あまりそういった飲みの席に顔を出さない新も、最後だからと仕事を終えたその足で、少し遅れて店に来たんだ。 新が来ると、当然のように女の子達はあいつの周りに集まり、向けられる嫉妬やら羨望の眼差しになんて慣れきってるあいつは、周りの男子の視線など気にする事なく、集まった女の子達に笑顔を振りまいていた。 そんな光景は、俺にとってはそれこそ今更気に留めるようなものでもなかったし、その事に対して、周りの友達が羨むのと同じ感情を持ってあいつを見る事もなかった。 あの日だって、そんな気持ちに変わりはなく。ブツブツと文句を言う友人たちを宥めながら一緒に酒を酌み交わし、最後の無礼講だと騒いだ酒の席は、いつも以上に楽しかった事は覚えてる。 だから、つい調子に乗って飲みすぎた俺は、全てがお開きになる頃にはすっかり出来上がってしまっていて。 ふらふらとおぼつかない足取りの俺を、新が部屋まで送ってくれた事はちゃんと覚えてる。 送ってくれる新に対して、どうせ今日も泊まるんだろうし〜…なんて思いながら、全く申し訳ないだなんて思ってもいなかったし、「相変わらず女を独占しやがって〜」などと、帰り道でからかい半分に絡んでいた事だって覚えてる。 でも、なんであの夜、ずっと友達だったこいつと抱き合う事になってしまったのか……気づいたら俺は、あいつの逞しい腕に抱かれていて。 相手が新だって事も、間違いなく自分達は男同士なのだという事も、酔っ払った頭でもちゃんと理解はしていたのに。 不思議なくらい気持ち悪いだなんて感情が沸いてこなくて。それどころか、あの新が、この俺を相手に欲情しているのだという事実が、おかしいけど嬉しいとすら思ってしまってたんだ。 ソファに倒れこんだ途端、それまで以上にぐるぐると回りだしたアルコールが、ふわふわとした気持ちの良さを伴って身を包み。 ぼんやりとした思考の隅で与えられた、一瞬触れた唇が、すごく気持ちよかった。 気持ちよくて笑えてきて……くすくすと笑みを零す俺を、信じられないものを見るように視線を向けてくる新の顔がおかしくて。 2度目の口付けは、俺が自らその首に腕を回し、そしてゆっくりと引き寄せたんだ。 『光流──…っ!?』 その瞬間、驚愕に見開かれた瞳が可愛くて。 自分から仕掛けたくせになんだよ〜…って、腹の底からくすぐったい感情が溢れ出し。 3度目は、新からだった──…。 明らかに、その前の2度のキスとは違うキス。 貪るような口付けの裏にあった、普通じゃない意味を含んだそれは、ちょっとびっくりするくらい気持ちよくて。 その先にある行為を、簡単に予測できるものだった。 『へへへ〜…な〜んか変な感じ〜。何?俺達やっちゃうの?』 ヘラヘラと笑いながら、そんな言葉を発した俺に、一瞬我に返った様子の新が、戸惑った視線を投げかけてきて。 滅多に見られない、どこか焦りを含んだあいつの表情が、やっぱり無性に可愛かったから。 その時離れた温もりを引き寄せたのは、間違いなく俺だった。 くすくすと笑い続ける俺を、戸惑ったままの新が抱きしめようとはしなかったから。 その事が無性に肌寂しくて。引き寄せた唇に、4度目のキスを送ったのは俺。 『気持ちいいならいいけどさ〜でもあれだな。男同士でキスなんかすっと、マジっぽくて気持ち悪ぃ〜』 別に、深い意味で言った言葉じゃなかったんだ。 それまで、誰よりも近い場所にいた新と、こうしてキスして抱き合ってる事が、妙に嬉しくて。だからこそくすぐったくて、照れくさくて。 だから俺にとっては、照れ隠しのつもりで言った言葉だった。 <<to be continued…→next click>> 目次はTOPページ(←クリックでページジャンプ)にございますm(__)m TRACKBACK
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新がこだわってた理由は…
こういうのは、言った方と言われた方、解釈1つで全然意味が違ってくるもんですものね。
光流にそのつもりはなかったんでしょうが、これは新がかわいそう…(←新スキーw)
光流、早く誤解を解いてあげてください(。>0<。)