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これまでだって、特に光流が就職してからは、1週間や2週間会わないなんて事は普通にあった。会うどころか、連絡を取り合うことすらないままに、1月近くを過ごした事だってある。 いくら学生時代に仲がよかったからと言っても、社会に出れば、望む望まずは関係なく、お互いのリズムに距離が出来るのは仕方がない事だ。特に、俺のように特殊な職業に就いていれば、当然時間なんて不規則だし。 学生の頃なら、光流の方が俺に合わせてくれる事もできたが、あいつが社会人となってしまった今となっては、当然それだって叶わない。 それでも、そんな中でも、俺はあいつとの時間を作ろうと必死になっていたと思う。 ただ、ありがたいことに、仕事が順調であればあるほど、なかなか思うようにはいかないのも現実で。 会えなかった分の乾きを埋めるかのように、会えばあいつを抱いて……抱いても抱いても足りなくて、いつしか抱き締めた腕の中から離せなくなっていたんだ。 あいつの肌に直接触れる事がなかった頃は、ただ傍にいて何気ない会話を交わすだけでもよかったはずなのに。自分の気持ちを自覚するまでは、行き過ぎた独占欲を抱えながらも、親友である立場に、満足していたはずなのに。 あいつを抱くようになってからも、決して手に入る事などないとわかっていたから、せめて隣にいるという、あいつの親友であるという自分の立場を守る事だけを考えるようにしていた。それが俺の逃げ道だった。 でも、1度その熱さを知ってしまうと、溢れ出す欲望に、もう歯止めなんて効かない。 どれだけ自分を抑えようと思っても、あとからあとから少しずつ噴き出してくる、あいつへと向かうドス黒い欲望の渦に、飲み込まれてしまいそうになるんだ。 身体を繋げたって、決して俺の事を友人以上の感情で見ようとしないあいつに、身体を許しても唇を許さないあいつに、俺の気持ちをわかろうとしないあいつに、理不尽だと身勝手だと知りながら、愛情とは裏腹な憎悪の感情すら抱くようになり。それが余計に自分自身を追い込むのだと、それだってわかっていたのに。 自分の中に生まれてくるそんな感情を、それでも必死に押し殺していた。 あいつに気付かれてはいけない。それを感づかれた時点で、ずっと守り続けてきた親友というポジションまでもを失ってしまう。 何もかもを失ってしまうのが怖かった。あいつという存在の何もかもを失ってしまうのが、何よりも怖かった。 どうして、あの時抱き締めてしまったのだろう。 ずっとずっと、気付かずにきた感情を、できれば気付かないままでいたかったなどと、そんな事すら考える。 あの時、俺さえ自分をコントロールできていたならば、こんな不毛としか言いようのない関係に陥る事もなかったのに。まだあいつは、俺の隣で笑っていてくれていたはずなのに。 あいつが、受け入れたから。あいつが、拒絶しなかったから──…。 そう何度も言い訳のように思ってしまう自分が許せなくて。 自分から手を出しておきながら、いくら酔っていたからと言って、それを拒まずに受け入れたあいつに、理不尽だとわかっていながらも沸き上がってくる黒い感情。 どうして拒まないんだ?気持ちよければ誰でもいいのか? 自分勝手に膨らんでくる不信感。 そして、それ以上の想いであいつを求める心。 偽りでもなんでもいい。それでもあいつが欲しかった。 俺の事を愛していなくてもいい。ただその温もりを、ほんの一瞬でもいいから自分のものにしたかった。 いつか壊れる日がくる──…それを知りながらも、手放す事ができなかった。 それでも、そんな状態が2年以上も続いて、俺とセックスをするようになってから、あいつが誰かと付き合っているという話を聞いた事がなかったから。 だから俺は、ありえるはずもない期待を抱き始めていたのかもしれない。 もしかしたら、このまま本当に光流を手に入れる事ができるんじゃないかって。身体だけじゃなくて、あいつの何もかもを手に入れる事ができるんじゃないかって。 思い切るまでに2年以上もかかるという、自分の気持ちの自覚の遅れに加え、とんでもない愚鈍さだったが、それでも少しずつ芽生え始めてたそんな淡い期待は、抱き始めたその瞬間にやはり握り潰された。 俺のやせ我慢の上に、それでも穏やかに流れていたはず俺達の関係が変わり始めたのは、光流が営業へと転向になった昨年の夏頃から。 俺が、自分の正直な想いを伝えてしまおうかと、半ば有頂天になり始めていたあの頃。そんなおろかな考えを打ち砕くかのように、少しずつ…でも確実に俺達の間に流れる空気が変わり始めたんだ。 ずっとずっと、望み続けてきたからこそ、ほんの僅かな変化でも感じ取ってしまう自分が、心底嫌になった。 あいつが見せる表情に、いちいちビクついてる自分に、それに追い込まれいく自分に、本気で嫌気がさした。 最初に感じた違和感は、抱いたあいつの身体の変化。2年以上も、不毛だと知りながら貪り続けたその身体の反応は、ほんの僅かな変化でさえも俺には感じ取れてしまって。 あの夏までは、それなりにそんな関係を受け入れてきていたはずのあいつが、一瞬見せた戸惑い。その一瞬の中に、初めて感じた拒絶。 その事実が、来るべき時が来たのだと、それをわかっていながらも、受け入れたくないと叫ぶ心。 抱き合ってしまったから、その関係が崩れようとしている時、同時に親友としての立ち位置までもが壊れていく恐怖。 あいつの全てを失ってしまうという、どうしようもない焦燥感。 そんな焦りが、俺とあいつの間から会話を奪い、それでも手放したくない存在を前に、ただ闇雲に抱き締めて。すぐにでも擦り抜けて行ってしまいそうな存在を、必死で繋ぎとめていた。 でも、そんな焦りは、ますます俺とあいつの距離を広げて行き。最近では、会えば暗い闇に引きずり込まれそうになるのをわかっているのに、それでも離れているほんの僅かな時間でさえも、俺からあいつを奪っていくようで。 繋ぎとめておきたい。でもその術がわからない。 大切にしたいのに、感じる不安に支配された心が、そんな思いと反して暴走していく。 そして、気付いたら俺は、誰よりも大切にしたかったあいつを、ひどいやり方で傷つけてしまう事しかできなくなっていた。 そんな事をすれば、ますますあいつが離れていってしまうと、それをわかっていたはずなのに。どうしても俺のものにならないあいつの心に苛立ち、その表情に怯えの感情すら浮かべるのに、それでも俺に抱かれ続けるあいつに苛立ち。 それでも、このままあいつを雁字搦めに縛り付けておきたいと、そう叫ぶ俺の心が、どんどん残虐なものに支配されていった。 あいつの気を引きたくて、今まで以上にスキャンダルを引き起こし。わざとあいつの会社の近くで、女と一緒に歩き……考えてみれば、本当に幼稚で幼いやり方だ。 そんな事をしても、あいつは俺のものになどならないのに。 そんな行動は、あいつの中の俺への不信感を煽るだけだというのに。 簡単にわかるはずの事がわからなくなってしまうほどに、俺は追い詰められていた。離れていこうとするあいつを、引きとめようと必死だった。 もちろん、それら全ての行動は、俺の自分勝手な思いからによるものだということなど、今更誰に指摘される必要もなく、自分が一番わかってる。 結果的に、そんな俺の行動が、あいつを苦しめ追い詰めていったんだろう事だって、容易に想像ができた。 でもな、光流。簡単に受け入れてしまうには、俺の心は少し壊れ過ぎてしまったのかもしれない。今、おまえが苦しんでるって、それがわかっていながらも、こうして焦らすかのように連絡を入れない俺の事を、おまえは今日1日でどれくらい考えた? 自分が想ったように、おまえも俺の事だけを考え想って欲しいだなんて、どこまでもわがままで自分勝手な俺の事を、おまえは許せないか? それでも、やっぱりおまえの中を俺で埋め尽くしてやりたいんだ。俺の事だけを考えてろ──…。 そんな事を考えていたって、我慢の効かない俺が大人しくしていられる時間なんて、限られたものなんだ。そんな事は、自分が一番よくわかってる。 すぐに迎えに行くから。そしたら、これ以上ないくらいの優しさで、おまえの全てを抱き締めてやるから。 もう少し……もう少しだけ、俺を想って泣いてろよ。 <<to be continued…→next click>> 目次はTOPページ(←クリックでページジャンプ)にございますm(__)m COMMENT
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