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« *注意書き* | きみがくれた空の色 act.2 »
これまでの俺の人生を振り返って見てみれば、たいした挫折もなく、どちらかといえば経済的にも環境的にも恵まれた中で生活をしてきていた。
大学を卒業した後、就職氷河期と言われる昨今、全く就職活動の苦労もなく、祖父が経営する会社に入社し、七光りと言われようとなんと言われようと、そんな事は気にも留めずに順調に出世の階段だって昇ってきた。 一応、会社に入ってからは一般の新人と同じように扱われ、いきなり役職に就く事なんてなかったさ。 そして、それなりに実績を上げてきたから、今の取締役部長って役職にだって就けているんだ。誰にとやかく言われる事もないはずだ。 まあそれでも、普通ではあり得ないスピード出世の道のりではあったが。でもそれは俺のせいじゃない。 俺のじいさんが経営してる会社だぞ?俺は会長の孫で社長の息子なのだから、そんなの当たり前だろう? なんて、がむしゃらに出世を夢見て働いてる奴らに聞かれたら、ボコボコにされそうな事を考えながら、それでも俺にはそんな事は関係ないと、それなりに充実した毎日を過ごしていた。 女にだって不自由した事などなかったし、特定の女を作るのは色々と面倒だなんて、そんな鼻持ちならない事ですら当たり前の事のように考え、不特定多数の女達と過ごした夜は数え切れない。 そんな俺の目下の悩み事と言えば、30歳を越えた3年ほど前から、ほとんど毎日のように親の口から飛び出す『結婚』の2文字くらいか? 俺の上には専務である6歳離れた兄貴がいて、もう結婚して次なる跡取りだっているわけだし、何も跡取り息子でもない俺に対して、そこまで目くじらを立てる事もないだろうに。 しかし社会生活というものは、そう簡単なものではなく。『結婚』の2文字に込められた、社会的立場の確立と信用が付属して付いてくる事くらい、俺だって嫌ってほどわかってるさ。 そして何よりもデカイのは、世間体だな。30をとうに超えたいい大人の男が、結婚の『け』の字もなけりゃあ、婚約者になりうる可能性のある特定の恋人もいないでは、世間体が悪いことこの上ないと、俺の顔を見るたびに零す両親に、いい加減辟易していた。 もちろん、そんな俺に焦れた両親が、持ち込んできた見合いの話は数知れずあるものの、結婚相手は自分でみつけますの一点張りで通し、応じる気などさらさらない。 まあ今の現時点で、一生を添い遂げようと思える女など1人としていないのだから、結婚だなんて考えられるはずもないのだが。 いい加減諦めてくれりゃあいいものを…と、内心零しながらも、幼い頃から優秀な兄に並べと言い聞かされ、それに応えるべくいい子を演じてきた俺は、今日も笑顔の仮面を貼り付ける。 「やっぱり外は寒いわね」 巷で話題のフレンチレストランで、今宵のパートナーとなる女と夕食を済ませ、その店から出た途端身を包む冷たい空気に、わざとらしい甘い声を上げながら俺の腕へとその細い手を絡ませてくる。 「大丈夫かい?ほら、こっちにおいで」 耳元に甘い囁きを贈りながら、女の細い肩をそっと引き寄せれば、それだけでうっとりと艶っぽい視線を投げかけてくる。 女は簡単でいい。こうしてちょっと甘い声で囁きかけ、微笑みを向ければそれだけで、あっさりと身体を開いてくるのだから。 「ねえ京悟(きょうご)さん、次はどこに連れて行ってくれるの?」 「雰囲気のいいバーで飲みなおしというのはどうだろうか」 「もちろんお部屋付きかしら?」 ほら簡単だろう?俺からその誘いをかけなくとも、女の方から言い出してくれるのだから。 誘うように見つめてくるその瞳に、微笑みながらもう1度肩を抱き寄せれば、応えに満足した女の身体がねっとりとした感触を伴ってしなだれかかってくる。 これで一夜限りの契約が成立したというわけだ。 少なくともこの夜までは、俺は今の自分の状況に満足していたし、今の充実した性生活を、結婚などという1人の女に縛られることで失うなんて冗談じゃないと思っていたんだ。 誰か1人に縛られる事などなく、適当に恋愛を楽しむ。しばらくはそんな生活が続くのだろうと思っていた。 そう…この夜までは──…。 <<to be continued…→next click>> 目次はTOPページ(←クリックでページジャンプ)にございますm(__)m COMMENT
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