駄文倉庫

完全オリジナルにて、BL小説なる駄文を書き綴っております。 性的描写を含む表現も出てまいりますので、18歳未満の方のご閲覧はご遠慮くださいませ。

きみがくれた空の色<正月企画> act.2

カテゴリー : きみがくれた空の色<番外編>
<<京悟side>>

幼い頃からの記憶を辿ってみても、大晦日から正月にかけて両親揃って家にいたという覚えがない。共に会社を支える役職に就く両親は、年末・年始関係なく、忙しく世界を飛び回っているような人たちだったから。
毎年、広々としたリビングの、大きなダイニングテーブルの上に置かれていた、子供に与えるにしては厚みのあるお年玉袋を、兄と2人手にしていた事ははっきりと覚えている。

それが当たり前なのだと思っていたし、特に寂しいと感じた事はなかったけれど。
それでも高校を卒業した頃から、クリスマスイヴの夜を過ごすかのように、大晦日にも毎年ホテルのスイートを取り、その夜限りの恋人を相手にその場限りの愛を囁いていた気がする。
考えてみれば、俺は寂しかったのかもしれないな。だから、その場限りの愛を囁きながらでも、一緒に過ごす女を誘い出していたのかもしれない。

しかし、さすがに今年はそんな気にはなれず。
陽生という存在がこの手の中にある今、一夜限りの恋人の存在などは、全く無用のものだ。
例え陽生と共に過ごせずとも、今の俺にとっては、あいつ以外の温もりなんて何の意味もなさなけりゃ、そんなものでは一瞬の満足だって得られない。

遠くに聞こえる除夜の鐘の音を聞きながら、一人傾ける琥珀色の液体が注がれたグラス。
シンと静まり返った室内の静けさは、痛いほどの冷え込みを見せる外気によって、この家全体が包み込まれているような錯覚すら感じさせられる。

「こんなにも静かだったか…」

ポツリと呟いた自分の声が、やけに大きく響いたような気がして。
こんな気持ちで新年を迎える自分に、自嘲が漏れ出す。

「2年越しで沈み込むのは、さすがに避けたいな」

誰に聞かせるわけでもない。そんな独り言を呟きながら確かめた時間は、新年を迎えるまで残り10分を指し示していて。
今からベッドに潜り込んだところで、結局眠れるわけがないじゃないかと、諦めて手にしたグラスの中身を一気に煽った。

ピンポ〜ン……

その時鳴り響いた、深夜になろうというこんな時間に、失礼極まりないチャイムの音。

「誰だ…?」

普通、こんな時間にチャイムを鳴らすか?
そんな憤りにも似た感情を抱きながら降りた玄関先。

「はい…」
「あ、お…俺…陽生だけど…」

無愛想に言い放った言葉の先に聞こえてきた声に、思わず勢いよく扉を開け放っていた。

「わ…っ!危な…っ…」

開けた扉の向こう、それを避けるように飛びのいたのは、鼻の頭を真っ赤にして、唇から白い息を吐き出す陽生の姿。
少々乱暴だった俺の行動を責め、文句を言いかけたその言葉を遮るように、目の前に現れた愛しい人の身体を抱き締めた。

「ここ玄関先だっての!」

そう抗議の声を上げる陽生に苦笑を返し、その身を解放しながらも唇に落とした口付け。
抵抗される間も与えず、すぐに離した唇に、文句を言いたそうな唇とは裏腹に、その瞳が足りないと言いたげな不満を訴えてくる。

「上がれるかい?」

微笑みかけながら問いかければ、ムッとした表情を浮かべながらも確かな頷き。
その手を引きながら迎え入れた部屋の中、「もういいだろう?」そう耳元に囁きながら、寒空の下を訪れてくれた冷たい身体をしっかりと抱き締めた。

「これないんじゃなかったの?」
「そうだけど……みんな寝ちゃったし。それに…やっぱり、あんたに一番最初におめでとうって言いたくて」

俺の背に手を回し、ぎゅっと抱きつき胸に顔を埋めてきた陽生が発した、照れ隠しのようなくぐもった声色。

「朝には1回帰るけど」
「送っていくよ」
「うん……」

すぐに帰るのではなく、朝までここに居てくれると言うその言葉に、先ほどまでの寒々と冷え切っていた心が、ふんわりと温もりに包まれる。

「冷たくなってしまっているね」

そっと重ね合わせた唇は、やはり冷たくて。

「あんたはあったかい。ねえ…温めてくれるんだろ?」

甘えを含んだ囁きと、仕掛けられる深い口付け。

「もちろんだよ──…」

そんな答えと共に、次第に深く貪りあう熱い塊。
徐々に上がっていくお互いの息遣いと重なるように、遠くで聞こえていた鐘の音がその音を止め、辺りを今度は温かな静寂が包み込む。
あんなにも寒々しかった空気が、陽生の存在ひとつで、こんなにも温かく胸に染み渡る。

「愛しているよ──…陽生」

縺れるようにして倒れこんだベッドの上で、口付けの合間に、唇に乗せ送り込んだ愛の囁き。
満足そうな笑みを浮かべた陽生が、伸ばし絡めてきたしなやかな細い手で、俺の心ごと包み込むように抱き締めてくれた。

「俺はちゃんとここにいるよ──…俺もあんたの事愛してるから…京悟さん…」

新しい年を迎えたその瞬間に紡ぎだされた言の葉は、これまでに感じたことがないくらいに心震わせ。
もう1度強く抱き締めた愛しい存在を、確かめるように、何度も何度も口付けを交わした。

<<fin.>> 目次はTOPページ(←クリックでページジャンプ)にございますm(__)m



↓これより下は、あとがきコメントになっております。

<<comment>>
最後までのお付き合い、ありがとうございました。
大晦日の日にUPという事で、『きみがくれた空の色』より、プチお正月企画でございます。

今回は前・後編にて、陽生と浅葉の両視点で書かせていただきました。
そしてこの小説が、2007年最後の更新となります。
まだまだ立ち上げたばかりのサイトではございますが、お越しくださり拝読くださった皆様、本当にありがとうございました。

2008年も、不定期更新ながら、頑張って書いていきたいと思いますので、ひとつお付き合いの程よろしくお願いいたします。
皆様、よいお正月をお過ごしくださいませねvv

最後までのご拝読、本当にありがとうございました。
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