これまでだって、何度も肌を重ねてきたのに。そのどんな瞬間だって、こいつは余裕たっぷりの態度で、俺の痴態を楽しむかのように触れてきていたのに。
今、俺を食い尽くすような勢いで触れてくるこいつからは、余裕の欠片だって感じられない。
どこか焦っているかのような、性急すぎるほどの愛撫が、吐き出す吐息も喘ぎも、根こそぎ奪っていくかのように、あんなにも欲しいと強請り与えられることのなかった口付けとともに贈られる。
「…っふ…ぁあ…っ…」
「光流……光流……」
顔中に降らされるキスの雨。
首筋から胸元へ……そして、恥ずかしいほどに反応を示す猛りへ。その全てに、余すとこなく与えられる愛撫は、激しく……蕩けそうなほどの甘さを胸に広がらせる。
「新……あら…たぁ…」
その存在を確かめるように、お互いの名前を呼び合い抱きしめ合う俺達は、誰に何を言われようとも、間違いなく恋人同士である瞬間を痛いほどに感じ合っていた。
こいつからの特別な言葉などそこにはなくとも、触れられた場所から伝わってくる、切な過ぎて痛いこいつの想い。
その全てが、まるで麻薬のように全身に染み渡り、甘美な痺れを施していく。
「…っひ…あ、あ……やぁ…っ!?」
その時、熱く滾る欲望が、不意に湿った感覚に包み込まれ。驚愕に見開いた瞳を向ければ、そこには何の躊躇もなく俺の下肢へと顔を埋める新の姿。
これまで、数え切れないほどに抱き合ってきたけど、その場所にこうして触れられるのは初めてで。形のいいその唇の合間から見え隠れする、ビクビクと震える己の欲望の存在が、包み込まれる愛撫にあり得ないほどに甘美な快感を訴えかけてくる。
「ま…待って…っ!あら…った……ぅぁあ…っんん…!」
ねっとりと絡み付いてくる舌が、敏感な部分を攻め立て、柔らかく扱き吸い上げられる行為に、内側から沸き起こる熱……全てに溶かされていく。
「や…やだ…ぁ……」
くらくらと、脳髄から溶かされていくような感覚に、必死に抵抗しようと伸ばした手は、縋りつく場所を見つけられず力なくシーツに沈んでいった。
そして、手繰り寄せ、鷲掴んだシーツを掻く手を、不意に包み込んできた温もり。
未だ俺の欲望への愛撫を繰り返す新の、そんな指先ひとつの温もりでさえも、今の俺には幸せすぎて感じすぎてしまう快感のひとつとしかなり得なくて。
こいつが触れてくれる場所の全てが熱くて──…
「や…っも…」
「嫌じゃないだろ?」
ちゅぽっと、わざとらしく音を立てながら、顔を埋めたその場所から視線を流してくる新の表情が、堪らないほど色っぽくて……愛おしいんだ。
恥ずかしいのに、初めて与えられたその愛撫が嬉しくて。
嬉しいけど、隙間なく抱きしめられない肌が寂しくて。
「新……新……」
ぬるぬると、先走りと唾液で濡れた欲望への愛撫を繰り返す新に、強請るようにして伸ばした手が、またもやんわりと包み込まれ、そのままそっと口付けられる。
そして、チロリと覗いた舌が、絡めとるようにして俺の指をゆっくりと舐め上げた。
「あ…あ……」
背筋から這い上がる、ゾクリとした疼き。たったそれだけで、果ててしまいそうになる。
これまでに抱かれたどの瞬間よりも、俺の細胞のひとつひとつがこいつの存在を感じ取り、僅かな刺激も温もりも逃すまいと、意識が触れられた場所、それだけに捉えられてしまっていた。
「イケよ…」
甘く掠れた言葉の愛撫。
そして、僅かな力で握りこまれたその場所が、次の瞬間熱い飛沫を迸らせた。
「っ…んぁ…っぁあっ!」
痺れるような絶頂感に、ビクビクと身体を震わせる俺の、全てを解放させようとするかのように、未だその動きを止めてくれない新の手。
熱を解放した直後の敏感なその場所が、燻り続ける快感の波に飲み込まれていく。
「お願…っ……も…離し…」
はふはふと、不規則な吐息を吐き出しながら、懇願する俺を見つめるこいつの瞳が、これ以上ない程の欲望を湛えていたから。
それだけで麻痺してしまう思考が、それでもこいつを求めてた。
「まだだよ…まだ足りない…」
そんな、欲望に掠れた低い声が耳元を掠め、そのまま重なり合った唇が、抱えきれないほどの愛しさを流し込んでくる。
何度も何度も、飽きる事なく繰り返される口付けは、それだけで十分すぎるほどに俺の心を満たしてくれた。
「…ふぐ…っぅん…んん…っ!?」
深く浅く繰り返される口付けに酔いしれている時、俺の最奥へと、不意に侵入してきた異物感。思わず跳ね上がった腰を押さえつけられ、先ほど俺が放った熱を潤滑油にして、一気に押し進められる圧迫感に、何の心構えもできていなかったその場所が、痛いくらいの収縮を繰り返すのを感じた。
その性急すぎるほどの行為に、裂かれるような痛みが襲うのに、満たされた心がそれを拒絶する事などなくて。
「キツイな…」
そんな事、わざわざ確認されるまでもなく、新だってわかっているはずなのに、視界の端に映ったその表情が、何故か俺よりも辛そうに歪んでいたから。
そんな余裕のない姿が、また愛しさを胸に溢れさせた。
「ごめ……」
少しでもスムーズに進められるように、埋められた指先の動きに合わせるようにして腰を揺らした俺を、見下ろすその視線が一瞬細められ。
「何謝ってんだよ…バカじゃん?」
「だって……ごめ……っんぅ──…」
そして、呆れた口調の中でも、細められた視線が愛しげに俺を映し出してくれるから。
へにゃっと情けない笑みを浮かべた俺に、再び与えられた口付け。
甘すぎて……今この瞬間、こいつが与えてくれる痛みも快感も、全てが甘すぎて。
「──…っは…ぁぁあっ!あ、あ…」
全てが収められた指が、俺の中がその形に慣れるのを待つことなく、知り尽くした弱い部分を攻め立て始める。
ひとつひとつに感じすぎて、ただでさえドロドロに溶け出している思考が、完全に壊れてしまいそうだ。
「新……新……」
熱に浮かされたように、ただその名前だけを紡ぎだす唇が、何度となく奪われ、止まらない喘ぎも溢れ出す唾液も、その全てがこいつに飲み込まれていく。
愛している……おまえを愛しているんだ──…。
そんな、切ないほどの想いも全てが、激しい愛撫と快感の波に……飲み込まれていく──…。
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