「ちゃんと慣らしておかないと、きみが辛いんだ。でもね、きみがどうしても嫌だと言うのなら、このまま止めたほうがいい。もっとね…方法はあるんだけど、生憎今日は何の準備もできていないから、これしか方法がないんだよ」
ごめんねって、切な気に揺れるこの人の瞳が、俺を大切にしたいんだって、傷付けたくないんだって訴えかけてくる。
この人の言う方法ってやつが、一体どんなものなのか、パニックに陥った俺は当然そんな事を問いかける余裕なんてなくて。
それでも、この人が与えてくれようとする愛情の大きさに、震える心が何よりもこの人を求めていた。
「ごめ…俺が焦らすなって言ったのに…こんなんカッコ悪いよな」
ギュッとその厚い胸板に縋るように抱きついた俺を、「そんな事ないよ」って言いながら宥めるように額へと口付けてくれる優しさが、じんわりと胸に染み込んできて。
同時に、どうしようもない欲望の存在が、ムクムクと俺の中で頭をもたげる。
「やめ…んなよ…いいから…俺、大丈夫だから」
怖い──…怖い怖い怖い!
恥ずかしくて恥ずかしくて、死んでしまいそうだ。
それでも、この人を感じて、この人の全てが欲しかった。
「本当にいいのか?」
「いいから…っ!これ以上恥ずかしい事言わせんなよ!」
「陽生……きみは本当に…」
ほぅっとため息をつきながら、ギュッと抱き締めてくれた温もりに、俺もまたほぅっと詰めていた息を吐き出す。
「きみは本当に可愛らしいな」
「かわ…っ!?」
「愛しているよ──…」
甘い甘い睦言。それと共に軽く触れるだけの口付けが頬へと落とされる。
俺も愛してる──…。そう続けたかった言葉は、再開された愛撫の渦に飲み込まれ、またも俺はまとまらない思考を必死で掻き集め、吹っ飛びそうになる理性を繋ぎ止めるのに必死だった。
「…っふ…ぅん、んん…あ、あ…っ!」
丹念に施される、あり得ない箇所への愛撫に、気を抜けばすぐにでもあられもない喘ぎが漏れ出す唇を、必死で噛み締め声を殺そうとするけど、これまでに感じた事がないほどの快感の波に飲み込まれそうになる思考がそれを許さない。
どうにかなってしまいそうなこの疼きを、早く解放してほしくて。
どうにかして欲しいと望む己の卑しさが、また大きな羞恥を運び込んでくる。
波打つ身体をやんわりと押さえつけられ、ヒクヒクと卑猥な蠢きを魅せ始める蕾を、それでもまだ嬲られ続け。
もう限界だった。甘い疼きと痺れを訴えるその場所が、舌を這わされ指でゆるやかに掻き回される内壁が、足りない刺激を求めてこの人の節くれだった指を奥へ誘い込む動きを見せ始める。
と、ゆるやかな動きだけを繰り返していたその指が、ある一点に触れ、グリッと回されたその先端がもたらす感覚が、ビリビリとしたありえないほどの快感を全身に走らせた。
「あ、あ…や…ぁぁあああっ!」
何!?なんなんだ…っ!?
知らない知らない知らない!こんな感覚知らない!
初めて感じる、恐ろしいほどの射精感をも伴うその刺激に、湧きあがってくる恐怖と快感に震える身体が、無意識のうちに逃げようとのたうつ。
「ここ…だね?」
「や…やぁ…っう…ぅぁあっ!あ…浅葉さ……」
その箇所を擦り上げられるたび、ビクビクと震える内股に、吸い付くように唇を寄せてきたこの人がそこを軽く吸い上げ、そんな僅かな刺激でさえも今の俺には十分すぎるほどの快感で。
不意に先走りの蜜を溢れさせる俺の欲望が、この人の熱い口腔へと迎え入れられ。
再び身を襲う痺れが、吸い上げられるたびにダイレクトな快感を運び込んでくる。
「だ…め…っ!ま…またイッちゃ…うっ!」
前と後ろに同時に与えられる刺激で、本気でどうにかなりそうだった。
女のように喘ぎ、この人に縋り、そんな自分が恥ずかしくてたまらないのに、どうしようもないほどに内側から湧きあがってくる欲望の存在を無視できない。
「いいよ…イッて…陽生」
「あ、あ、ああああ──っ!!」
耳元で甘く囁かれ、強く扱き上げられる欲望が全身に甘い痺れをもたらし。
次の瞬間、固く身を強張らせた俺は、絶叫に近い叫びと共に湧きあがる飛沫を解放した。
全てを吐き出した解放感に、うまく呼吸すら吐き出せず、ぐったりとベッドに沈み込む俺を、あやすようにそっと抱き締めてくれる腕が泣きたいくらいに温かくて。
自然に溢れ出してくる涙は、とんでもない痴態を晒した屈辱感からくるものではなく、心の底からこの人が欲しいと、この人を愛していると訴える俺の悲痛な叫びだった。
「ごめんね…俺もそろそろ限界だ」
そうして囁かれた告白。それを耳にした瞬間、ゾクリとした恐怖にも似た怯えが込み上げ。
それでもこの人が欲しいと叫ぶ心のままに、その厚い胸板にギュッと縋るように顔を埋めた。
「いいよ…俺ばっか申し訳ないし…それに、俺ばっかイカされたんじゃあ不公平だ」
怖いのに、口をついて出るのはどこまでも強がりなこんな台詞。
俺の虚勢に気付いているんだろう。覗き込んでくるこの人の瞳には、フッと優しい笑みが浮かんでいて。
「ゆっくりね…きみを傷付けるような事はしないから」
「なんでもいいから……余計な事ばっか言ってないで、さっさとしろよ」
そんな俺の言葉にさえも、穏やかな笑みを湛えるこの人の表情は、蕩けちゃいそうなくらいの大きな愛情が溢れていた。
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