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きみがくれた空の色<番外編> act.1
初めてあの人を見た時は、こんなところで昼飯も食べずに、何をボ〜ッとしてるんだろうって、それだけだった。

いつもの指定席に腰を下ろそうとする時、いつもふと視界の端に映るあの人は、ぼんやりと焦点の定まらない目つきでどこか遠くを見ていて。

一見しただけでは、なんの苦労も知らない、いかにもエリートですって風貌で。
身に纏うオーラも違うって言うのかな……ちょっと嫌味なくらい、きっちりと着込んだ高そうなスーツが似合ってて。

でも、エリートサラリーマンと言うには、どこか崩した髪形は、逆の意味でとても好感が持てた事だけははっきりと覚えてる。

この公園に来る時、最初は人を惹きつけるオーラを全開にしているように感じるのに、ふとした瞬間にその全てを閉じ込めてしまうような、まるで周りを遮断するかのように気配を消し去っているようにさえ思えるあの人の事が、不思議なくらい気になってた。

いつもその姿を視界の端に認めながら、きっと俺はあの人に近づける機会を伺っていたんだと思う。
自分でもよくわからないけど、無性に気になって仕方がないあの人と、1度でいいから会話を交わしてみたかった。

だからあの日、昼休みの時間いつものように公園に来たあの人が、突然バタンと仰向けに倒れて。
驚いた俺は思わず駆け寄ってた。

突然覗き込んだ俺に、同じように驚いた表情を浮かべたあの人が、なんだか無性に可愛くて…って、自分よりあきらかに年上の人掴まえてその言い草もおかしいけど。

そして……無性に話をしてみたくて。
『くたびれたオヤジ』だなんて心にもない事を言いながら、断りもなく隣に腰を下ろした俺を、あの人は拒絶しなかったから。

浮かれてたんだよな。
何故かわからないけど、すごく嬉しくて。

その日からお昼の1時間足らずを一緒に過ごすようになって、俺だけじゃない、あの人…浅葉さんも俺に興味を持ってくれてるんだって事はすぐにわかった。
それがまた嬉しくてくすぐったくて───…。

だけど、あんなに鈍い人だとは思わなかった。
30超えたいい大人が、俺から謎掛けしなきゃ自分の気持ちに気付かないなんて。

しかも、見た目だけで言えば、あんなにも遊び慣れてそうな気がするのに。
いや、実際遊び慣れてはいるんだろうけどさ、絶対この人は本気の恋愛なんてした事がないって、妙な確信が持てたんだ。

それがまた嬉しかったなんて、絶対に言ってなんかやんないけどさ。
たいした恋愛経験がない俺にだってわかる事なのに、当の本人は全然自覚ないんだもんなあ。

でもそれがまた可愛かったりね。
だから、こうなったら絶対俺に本気だって認めさせてやるって思ったんだ。
思ったんだけど…甘く見てたのは俺の方かもしれない。

さすがとでも言うべきか、無駄に年を重ねてきてるわけじゃないとでも言うべきか。
しょっぱなから強烈なキスを仕掛けてきたあの人は、その瞬間に自覚したらしい気持ちを前に、全く怯む事なんてなくて。

むしろ、俺の方がタジタジしちゃうくらいに積極的で、大人の男の手腕…って言い方はおかしいかな。
とにかく!こっちが照れくさくなるくらいに、落ち着き払った物腰で甘い雰囲気を仕掛けてきた。

2度目のキスをされて、ぶっちゃけ足腰立たない状態で、くったりとその逞しい胸板に身を預けた俺の耳元で、これまた腰が砕けそうなくらい甘い声で囁いたんだ。

「仕事が終わる頃に迎えにくるから、俺の部屋においで」

って!いきなりそっち!?
目を白黒させる俺に、クスクスと楽しそうな笑みを浮かべて。

「言っとくけど、部屋に誰かを招くのは初めてなんだよ」

それって立派な殺し文句だよ!!
恋愛初心者なんて、そんな純情ぶるつもりはないけどさ、でもだからこそ、あんなキスをされた後に部屋に誘われたりなんかしたら、あらぬ期待だってしちゃうだろ?

何だか悔しくて、行かないって言った俺を、それでもクスクスと笑みを浮かべながら見つめてたあの人は、すっかりその気になってる俺に気付いてたんだと思う。

ちくしょう!
部屋には行ってやるけど、絶対手を出させてなんかやんないんだからな!

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  2007/12/13 きみがくれた空の色<番外編> コメント(0) TB(0) 記事No(8) ▲TOP
きみがくれた空の色<番外編> act.2
(R-18)

そう思ったはずなんだけどなあ…。
なんでしょう、この状況は?

仕事が終わる頃、約束通り迎えに来た浅葉さんに連れて来られたあの人の自宅は、周りに立ち並ぶ家々を見てもわかるように、あきらかな高級住宅で。

デカイ!とにかくデカイ!

「まさか…実家なの?ってか…金持ちのボンボン?」
「30も過ぎて、親と暮らしているなんて少し恥ずかしいんだけどね」

恐る恐る尋ねた俺に、明確な答えをくれないまま、苦笑しがら案内してくれた浅葉さんの部屋は、これまたデカイ!
一体何畳あるの?ってか、俺の家が丸々1個入っちゃうんじゃないの?

それくらい広々とした室内は、見るからに高級そうな革張りのソファの前に、これまたデカデカと置かれた大型液晶テレビの存在。

ってか、リビングじゃなくて、自室にソファがあるって何だよ。
部屋の隅に置かれた、キングサイズのベッドも気になるし…って、違うぞ!?
別にそのベッドが気になるってのは、そういう意味じゃないからな!!

別に誰に心を読まれたわけでもないのに、慌ててそんな言い訳を心の中で叫んだ俺は、自らの置かれた状況ってのに、かなりテンパってたんだと思う。

「何か飲むかい?」
「ビール!!」

促され腰掛けたソファは、革張りなのに固くなんかなくて、むしろ身体を包み込むようにふんわりと沈み込む感触は、ヤバイくらいに気持ちがよくて。

それでも、慣れない居心地の悪さにもぞもぞとお尻を動かしながら、問われた言葉に思わず即答で返してた。

「ビールって…きみ未成年だろ?」
「今時そんな固い事言うなよ。オヤジくさいなあ」

緊張から、そんな憎まれ口を叩く俺に、浅葉さんは気を悪くした様子もなく。
いやまあ…俺の憎まれ口ってのは、今に始まった事じゃないんだけどね。

「そうだね。確かに、俺もきみくらいの年齢の時はすでにアルコールの味を知ってたな」

そう言いながら浮かべられた、穏やかで柔らかい笑みに、ドキドキしてしまった。

「でもごめんね。生憎と、普段からビールは飲まないものだから…ブランデーかワインしかないんだ」

ブランデー…ワイン……。
うちにはビールはおろか、発泡酒しか常備されてないってのに。

「それでもよければ、すぐに用意してくるけど」
「なんでもいい。とにかく何か飲みたい」

またもや即答した俺に、やっぱりクスクスと笑みを浮かべて頷いた浅葉さんは、ちょっとムカつくくらい余裕だった。

その後、持って来てくれた見るからに高そうなワインは、アルコール初心者の枠を出ない俺にも飲みやすくて。
進められるままにグラスを開けて…気付いたら──…この状況!!

「な…な、なななっ!?」
「きみは本当に不思議な子だね」

部屋に入った時から、そのデカさにもそりゃあびっくりして、気にはなっていましたともさ。
だからって何で今、俺はそのベッドに押し倒されちゃってるわけ!?

俺の耳の横につかれていた浅葉さんの手が、ゆっくりと俺の髪を梳いてきて、囁かれる甘ったるい声とその仕草にうっとりしちゃって……って違うから!!

「こんなにも、誰かを愛しいと思うのは初めてだ。そういう意味では、俺はきみが言ったように、これまでまともな恋愛をしてきてなかったんだろうな」

そう言った浅葉さんの顔がゆっくりと近づいてきて。
ちょっと待って!って思うのに、アルコールの力を借りてふわふわとした思考を前に、俺はまともな言葉を吐き出す事ができなくて。

「わからせてもらう必要なんてないよ……もう俺はわかってるから」
「な…な、何を…?」

「きみの事を愛してる───…」

ズシンと腰にくる甘い囁き。
同時にやんわりと塞がれた唇から、この人の温もりが伝わってきて。

「……っふ…ん…」

抵抗らしい抵抗なんて何ひとつできないままに、ただでさえアルコールでトロトロになってた俺の思考は、与えられる甘すぎるキスに完全にドロドロに溶け出してしまっていた。

そっとそっと、緩やかな動きで俺の身体を這い回る、浅葉さんの大きな手は気持ちよくて。
何度も吸い上げられた唇と舌の痺れが、そのまま全身をも甘く包み込んでいく。

唇で、舌で愛撫されながら、その指先が不意に布越しに胸の飾りへと触れた瞬間、今まで感じた事がない痺れが背中に走った。

「ぅあ…っ!あ、あ…っん」

漏れ出した、鼻から抜けるような甘ったるい声が、自分のものだなんて信じられなくて。
慌てて口元を押さえた右手が、やんわりとした仕草で解かれ。

「声、聞かせて…」
「だだだ…っ!だって…っ!!」

こんな声、俺は女じゃないのに!
なのに胸をいじられて気持ちいいなんて、絶対ありえないから!!

「きみの声を聞いていたいんだ」
「そ…そん、そんな…っ!?」

ここは浅葉さんの実家で、招き入れられた時に家族と思われる人…ってか、誰とも顔を合わさなかったのは確かだけど。
それでも1人暮らしをしている家ではないわけで。

「大丈夫、今誰もいないから。だから、何も気にする事はないんだよ」

あ、そっか…。
って、違うから!

いや、誰もいないってんなら、別に声を聞かれる事自体は気にしなくていいわけだし、それはそれで安心なんだけど。

でもでもでもっ!!
俺が恥ずかしいんだっての!

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  2007/12/13 きみがくれた空の色<番外編> コメント(0) TB(0) 記事No(9) ▲TOP